収率の定義
分子の から が生成する という反応を考えてみましょう。それぞれの物理量が以下のように与えられていたとします。
質量 / | 分子量 / | |
---|---|---|
原料物質, | (投入量) | |
目的物質, | (収量) |
既知の反応であれば、これらの物理量はほとんどの場合秤量などなんらかの測定を通して知ることができます。このとき、 の収率(yield) を以下のように定義できます:
収率: 定義
内部標準法
分析機器で追跡しやすい特定の物質(標準物質, Standard)を系に加えることで目的物質を機器分析の結果から定量するやり方を 内部標準法(Internal Standard Method) といいます。
NMRによる方法
NMRシグナル(ピーク)の強度(積分比)は定量性をもつので、標準物質のピーク強度と目的物質のピーク強度の比から収量を知ることができます。1H-NMR での例を示します。
積分比 | Hの数 | 物質量 / | 質量 / | 分子量 / | |
---|---|---|---|---|---|
内部標準物質, | |||||
目的物質, |
※Hの数 は対応するピークを与える等価なプロトンの数を示します。
内部標準物質の量を原料物質に対する当量で決めておけば、上式の比を原料物質と目的物質のそれに読み替えることができるわけです。たとえば、内部標準物質を原料物質と等モル入れたとするならば、
となります。
HPLC/GCによる方法
クロマトグラフィーの分解能はサンプルの濃度に依存します。それぞれ濃度の異なる目的物質の希釈サンプルをいくつか用意し、一定量の内部標準物質を加え、各サンプル毎に目的物質 / 内部標準物質の濃度比 および 目的物質 / 内部標準物質のピーク面積比 を求め、これらを各軸にとって検量線[1]を作成します。
サンプル濃度 / | ピーク面積 | |
---|---|---|
内部標準物質, | ||
目的物質, |
濃度未知のサンプルに内部標準物質を添加し、同条件でクロマトグラムを測定することで、ピーク面積比から検量線上の一点が得られるため、濃度未知サンプル中の目的物質濃度 を定量することができます。
原料物質の(反応前の)濃度を とおけば、
として収率を計算できます。
参考
脚注
ここでは検量線が正比例であるとしますが、必ずしもそうとは限りません。検量線が正比例であることが確認できる場合には、代表点を1つだけとって検量線を作成する場合もあるようです。 ↩︎