一様性の検定
設定
因子 からなる2×2分割表が次のように与えられているとします:
行和 | |||
---|---|---|---|
列和 |
ここで は水準 における観測値で、 は についての和(行和)、 は の和(列和)を表します。このとき、因子 の各水準について同じ分布にしたがうかどうかを検証する方法を 一様性の検定 といいます。
すなわち、観測値が水準 に属する確率 を定め、以下の仮説を検定します:
一様性の検定
行和 | |||
---|---|---|---|
列和 |
適合度検定
列の生起確率 の最尤推定量 は、帰無仮説 のもとでは各行で生起確率の違いはないとするので、
を得ます。これより、所与として行和 を与えた時のセル への当てはめとして、最尤推定量 あるいは 理論値 :
を得ます。一方、対立仮説 のもとでは観測値 がそのままセル への当てはめとなります。すると、検定統計量:
によってこの仮説を検証することができます。
尤度比検定
この系は行ごとに異なる多項分布にしたがいます。よって、(定数項を除いた)最大対数尤度 は次のように得られます:
帰無仮説のもとでの最大対数尤度は、
となります。一方、対立仮説のもとでの最大対数尤度は、
となって、尤度比検定統計量:
による検定をおこなうことができます。
独立性の検定
設定
一様性の検定では行和 を所与とすることで2群の比較に持ち込みましたが、表1 のような分割表で最も自然なモデルは各セルがおのおの異なる生起確率 によって観測値 をもつような場合でしょう。そのようなモデルは、
という同時確率関数で与えられる多項分布となります。このような設定を 独立性の検定 といい、以下の仮説を検定します:
独立性の検定
行和 | |||
---|---|---|---|
列和 |
適合度検定
セル の理論値 は、帰無仮説のもとでは
と与えられます。対立仮説のもとでは同様に ですから、検定統計量は一様性の検定と同じ形式で、
となります。ただし、この検定で所与となっているのは であり、飽和自由度は となります。
尤度比検定
尤度比検定統計量も一様性の検定と同じ形式で、
を与えられます。
主効果モデル
水準 での観測値としてにめったに起きない(頻度の低い)ものを与えた場合、おのおの独立なポアソン分布 の同時確率関数:
を考えたほうが都合のいい場合があります。この場合、所与は与えられず、2×2分割表での飽和自由度は4となります。モデルには、制約付きの対数線形モデル:
を利用します。ここで はそれぞれ因子 の効力を表す 主効果、 は と のシナジーによる 交互作用 を表します。このとき、以下の仮説の下での検定を考えます:
主効果モデル
すなわち、因子 による交互作用の有無を検定します。
2元分割表の検定:一般の場合
分割表を一般化した 分割表を考えてみると、これは自由度が変わるのみで の場合を自然に拡張することができます。
仮説 | 母集団分布 | 帰無仮説下での理論値 | 自由度 | 飽和自由度 |
---|---|---|---|---|
適合度検定:一様性の仮説 | 行ごとに独立な多項分布 | |||
適合度検定:独立性の仮説 | 1つの多項分布 | |||
主効果モデル | 独立なポアソン分布 |
自由度については、飽和自由度から帰無仮説下での値を除いた差分は、必ず となります。この差分がカイ2乗分布の自由度となります:
適合度検定:2元 分割表
参考
書籍
『統計学実践ワークブック』(学術図書出版社, 2020)第28章